だから何ですか?Ⅲ
『愛おしい』
そう言わんばかりに熱情のこもった緑を包み隠さず誤魔化さずに見せつけられるのは初めてだ。
そして・・・きっと最後。
彼の強固なストッパーが緩んでいるのか、更に距離を狭めんと静かに寄せられる端整な顔に逃げる事はせず、それでも目蓋を下ろすでもなく見つめていれば唇に得たのは彼のもどかし気な息遣い。
重なりあうような感触はなく、一瞬の不動の後にゆっくりと後退し離れていく姿にクスリと笑って見つめ上げた。
「しないと思った」
「そう言うところが本当に性質が悪い」
「雨月君ほど自分に強靭な人があっさりとその場の感情に飲まれて今までの自分をふいにする筈ないもん」
「本当に腹立つ女だな」
「そんな私が大好きな癖に」
「っ~~~腹立つ。本当に腹が立つ、自分に」
彼のこんなしてやられたような顔を見れるのも私の特権であるのだろう。
心底不愉快だと言わんばかりに表情を歪めて私を睨み下す姿に、クスクスと笑って見せるとスルリと腕を巻きつけ直して身を寄せた。
その行動にはどうやら彼も今程の葛藤を放り投げて意識を向けてくれたらしい。
どうした?と問いかける様に私の頭を撫でる手つきは心底優しい。
それにさらに素直さを引きずられて、喉元まで込み上げていた感情の熱を発散させるように息を吐くと。