だから何ですか?Ⅲ
「あいつの事なんか微塵も恐くないの」
「・・・・・」
あいつと言って勝手に脳裏に浮かぶのは扉の向こうで主役という座に収まり愛想を振りまいている悪ガキだ。
本当であるなら忘れていたい。
今までの様に特に引き出すでもなく無関係の距離に置いておきたかった。
でも、きっと、もうそれは叶わない。
「・・・私は平気なの。あいつの言葉に、仕掛けに、壊れるような事はない。ただ目障りだとか、阿呆らしい悪ガキだと思うくらいで今の私は崩れない」
「・・・・・」
「でも・・・もしあいつが・・・伊万里さんに何かしようものなら私は平常で居られない」
「・・・・・」
「大人しく・・・彼の子供じみた嫌がらせの的でいてあげられるもんか。・・・・・・・・だから、その時は、」
そこまで言いかけて僅かに言葉が詰まる。
まだ健在の理性が言っていいの?と問いかけてきたからだ。
それでもそんな理性を押し戻したのはそっと唇に触れてきた雨月君の指先だ。
「・・・言えよ、」
代わりに続きを促す指先と言葉と恍惚とした眼差しと。
その言葉を待っていたと言わんばかりの彼の双眸の揺らめきは歓喜と狂気が入り混じる。