だから何ですか?Ⅲ
「伊万里さ・・・伊万里さん・・・」
気が付けばポロポロと零れ落ちる涙が頬の傷の痛みを煽る。
それでも抑制叶わず込み上げた感情が決壊して、子供が縋るように嗚咽混じりにその名を呼んでしまう。
あんなに高城の狂気は恐いと思わなかったのに、殴られて殺されそうでも冷静でいられたのに。
今が一番恐くて不安で・・・
「っ・・・・和、」
懇願するように泣き声を響かせればグラリと緩やかに体が揺らされた。
自分の体が重いのだと感じる引力。
それでも優しい力に引き起こされ、次の瞬間にはすっぽりと温かな感触に包まれた。
「泣くな・・・居るから」
そんな響きを音として耳に、唇が触れている額から肌で、抱きしめられている体全体で感じて、『泣くな』と言われたのに『ふえっ』と声を漏らすとポロポロと泣いてしまった。
涙の決壊。
何年分の蓄積だった?
それを理解するように、労わるように、・・・愛おしいと言ってくれるようにキュッと抱きすくめてくれる力は強いのに優しくて。
頬に流れて広がる涙をぬぐう手つきもひたすらに柔らかく、涙の下の赤味には切なげに顔を歪める彼がいて。
ああ、そんな顔をしないで。
すぐにそんな意識が走り、