だから何ですか?Ⅲ
この小さくも幸せな甘さにとことん浸っていたいけれど。
やっと得た甘味にここぞとばかりに舌つづみを打って味わっていたいけど。
・・・なんか・・・ちょっと・・・。
「・・・・眠たい、」
そう発した声からすでに覇気が抜け始めているを客観的に感じた。
聴覚すらどこか遠巻き自分の声を拾い始めていて、視覚でさえも今までは違う感じに歪んでぼやけて。
意識さえもずるずると内部に引き込まれそうな感覚に陥り始める。
そんな私を抱きしめていた腕を緩め覗き込んでくる彼の表情はほんの少しの驚愕?
それに不安も混ざっているようであるから遠のく意識感覚にもフッと口の端を上げてみせて、
「・・・大・・丈夫・・・ですよ?」
ちょっと・・・疲れただけ。
そう、少し・・・頑張りすぎて眠いのだ。
だって・・・何年越しの時間の清算であるのか。
自分の中に蓄積し続けていた重りをようやく取り払ってしまえばあまりの身の軽さや自由さにやっと体が休息できると機能したような。
だから・・・不安な顔をしないで。
大丈夫だから。と力なく彼の頬を一撫で。
そんな私の手に被さってくる手の大きさや熱が言いようがないくらいに好き。
そっと近くによって合わさった額の感触も好き。
至近距離で絡む眼差しが好き。
伊万里さんが・・・
「・・・好きだ、」
「・・・・・・・・フフッ・・・先を・・越されました」
落とされた響きはまさに自分が吐こうとしていた物。
負かされたと思えど負けてよかったと感じる甘さに無意識に涙が零れて、それがスイッチであったかのように意識はガクンと沈んで落ちた。