だから何ですか?Ⅲ
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「・・・・・・・・フフッ・・・先を・・越されました」
ずっと、改めて告げたかった感情を吐露すればそんな言葉を響かせ嬉し気に笑った亜豆が意識を手放す。
当然だろう。
精神的にも体力的にも限界であった筈だ。
その苦痛から解放された瞬間であるのだから存分に休むといい。
そんな風に労わり、傷ついた頬を柔らかく撫でるとキュッと抱きすくめて息を吐く。
「ご苦労さん・・・」
まだまだお前には言いたい事がたくさんある。
感情だって一部の吐露にしか過ぎなかった。
だから・・・目を覚ましたら今度はお互いの時間の清算をして向き合おうじゃないか。
そんな事を心で告げて、ゆっくり腕を緩めると亜豆を抱え上げて振り返る。
そうした瞬間に捉えた光景の瞬間には自分の抱いていた憎悪が減少した気がする。
憎しみを持って高城を振り返れば、捉えたのは蹲っていた高城を容赦なく足蹴にする大道寺さんの姿。
その姿が、表情が、纏う全てが味方である筈なのに俺でさえも恐怖に駆られる。
全くの情など浮かべぬ緑の双眸は冷たく鋭すぎて視線の刃はどれほど痛いのか。
それを一身に受けている高城は亜豆に見せていたような虚勢などなく、一瞬で戦意を喪失したように硬直している。