だから何ですか?Ⅲ



その硬直は空気を伝わってこちらまで。


息をしてもいいのだろうか?


そんなバカげた疑問まで浮上する程に完全にこの場は大道寺さんの狂気に満ちている。


一瞬でも動けば容赦なく食い殺される。


そんな空気にこの場は満ちている。



「・・・・良い様だな・・高城」


「っ____」



ようやく落とされた言葉と冷笑にはヒヤリと悪寒が走るほど。


心底この状況が、相手の陥落した姿が楽しくて仕方ないと笑う姿は残酷だと言っていいのだろうか?


決して高城に同情の余地はない。


する気もない。


それでも・・・・この人を前に、敵にして睨まれる状況には気の毒だと思わずにはいられない恐怖がある。


恐怖はある。


でも・・・・。


腕の中のボロボロの亜豆を再度その目に映せば一瞬でそんな微々たる同情も飛んで、浮かんだ言葉は___




『ざまあみろ』




と、言うところだろう。



「『殺されないだけありがたいと思え』」


「っ・・・」


「・・・なんて、甘っちょろいセリフを期待するな」


「な・・・ど・・」



どういう意味か。


そう問いたいであろう高城の驚愕と畏怖に満ちた姿は前に見せた余裕さは皆無。


あの鬱陶しいと思っていた笑みなど二度と浮かべぬのではないだろかとさえ思ってしまう。



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