だから何ですか?Ⅲ
「・・・・亜豆は?」
「あっ・・・えっと、」
「・・・・・気を・・・失ったか」
近づき言葉を発しながら俺が答えるより早く状態を確かめると痛々しい亜豆の頬にそっと優しく指先を走らせる。
どこまでもどこまでも優しい所作。
向けるまなざしもどこまでも澄んで純粋な宝石の様で、
「馬鹿が・・・・」
そう詰る言葉でさえ労わりと愛情に満ちている。
ああ・・・・この人もこんな優しく笑う事が出来るんだ。
フッと静かに口元に浮かんだ弧は控えめだけども美しい。
妬くべき場面なんだろうか?
そう思えどやはりこの人には嫉妬の感情を抱けなくて、それは恐怖とか畏怖からではなくこの人の愛情が俺から亜豆を奪うようなものでないと何故か感じるから。
ただひたすらに・・・・亜豆の幸せを望む愛情。
亜豆を・・・・愛してるんだな。
「・・・・で?殴るなら今だぞ」
「・・・・えっ?」
「高城だ。今なら戦意喪失の絶望感に放心してるから殴りたい放題だぞ」
「えっ!?いや・・・殴りたい放題って・・・」
クイッと親指で背後の高城を示してさらりと恐ろしいことを言い出す姿には思わず顔が引きつってしまった。