だから何ですか?Ⅲ
フーッと晴天の空に口内に苦みを広げていた煙を噴きだし見上げる。
雲一つない空の下は暑くもなく寒くもなく、どこまでも良い陽気で心地がいいと全身で感じて小さく口の端が上がるほど。
それでも、すぐ横を車いすの老人が点滴のポールと一緒に看護婦に押されて通り過ぎるのを捉えて静かに煙草を携帯灰皿に押し付け消した。
場所はさすがに院内ではない。
病院の外と言える玄関口。
煙草を吸っていてもさすがにあからさまに注意を受ける場所ではないけれど、やはり何となく気遣いを持つべきだろうと灰皿をしまい、腕を組んで近くの壁に寄りかかって空を見上げる。
気持ち良いな。
うっかり心地の良さに眠気が誘われそうな程。
頬を時々掠める風も柔らかくて、その風に揺らされる髪が肌を擽るのもなんだか平和だ。
そんな事を思ってひたすらに自然の温かみに酔いしれていた自分の聴覚に、すぐ横の自動ドアが開く音を聞き取り閉じていた目蓋をあけて視線を動かした。
ああ、今度は当たり。
そう思って捉えた姿に口の端が上がった。
さっきから幾度となく同じことをして時間を過ごしていたのだ。