だから何ですか?Ⅲ





相変わらずのドライで無表情。


淡々サラリとどこか俺を突っぱねる亜豆スタイルの切り返しに、特別意識なく言葉を返したつもりであった。


なのにどうやら俺の一言は予想だにせず亜豆の急所を掠めたらしい。


押し黙った姿の双眸には驚愕と同時に歓喜がジワリ。


それでもあからさまにそれを出すのを躊躇っているらしく、唇をキュッと噛みしめる素振りがまた愛らしい。


それでも・・・やっぱり痛々しいな。


口元に意識がいけば自ずとすでに黒ずんでいる傷痕に視線が走る。


口の端から頬の上と、鬱血した後はまだしばらく消えそうにないだろう。


思わず無意識に伸びた手がそんな患部を労わるように撫でていて、そんな刹那にスッと身を引いた亜豆にはハッと意識を引かれて覗き込む。



「悪い、痛かったか?」


「・・・・・・・・・・・・・鈍感」


「へっ?」


「っ~~~伊万里さんの馬鹿」


「え・・・ええ~・・・・」



何?なになに?


何でいきなり不貞腐れられた?


えっ?鈍感?


痛みにって事か?


馬鹿?


何で???



と、何故いきなりそんな事を言われ逃げるように避けられ、更には完全に見えぬように俯かれられたのか。



< 306 / 381 >

この作品をシェア

pagetop