だから何ですか?Ⅲ
公衆の面前とかモラルや羞恥はどこへやら。
細身の体を抱き寄せれば久しぶりと言える細身を感じて安堵する。
やっと・・・戻った。
そんな感覚か。
もう余計な言い訳も理由もない。
拒絶する意味も拒絶される理由もない。
ただ、感情任せに抱きしめられる開放感に満ちた抱擁がこれほどまでに心地いいものだったとは。
それでもさすがに病院前で濃厚濃密なキスをかますわけにいかず、感触のいい唇を確かめる様に押し重ねて時々食んで。
重ね合わせていた時間もそれほど長いものじゃない。
お互いに引き際を弁えてスッと離れた顔の距離。
名残惜しいと視線だけは至近距離で絡み、それを先に断ち切ったのは亜豆の方。
それでも視線の代わりとばかりにピットリと身を寄せる仕草には抑制していた欲求も簡単に疼きそうで苦笑い。
それを更に煽るのは、
「どうしましょう・・・・全力で甘えたいです」
「っ~~~煽るな」
「先に煽ったのは伊万里さんですよ・・・もう伊万里さん欠乏症でいっぱいいっぱいなんですよ」
そんなん・・・俺だってもうずっと欠乏症で禁断症状も飛び越えの瀕死だったっつーの。