だから何ですか?Ⅲ
どっちがより辛かったのか。
好きであるのに振られる事と、好きであるのに振る事と。
・・・両方か。
いや、今更どっちがより辛かったの張り合いをする気はない。
だからこそ、縋ってきている彼女の頭を撫で抱きよせる事でお互いの欠乏を静かに埋めていたけれど。
『ねえ、何であの人達ギュってしてるの?』
そんな無垢なる子供の問いが一番太刀打ち出来ず、大人の囃しよりも羞恥が走る。
さすがにお互いに小さく噴いて体を離し、顔を見合わせ更に苦笑い。
近くでは疑問を口にした幼い子供が母親らしき人に連れられ院内へ。
そんな後ろ姿を見送り頬を一掻きすると、
「退院早々捕まえて悪いんだが、」
「退院って・・・大げさな。点滴すらしない検査入院だったんですよ?2日程の。本当は日帰りでいいくらいだったのに、雨月くんが何を言ったのか特別室に放りこまれて」
「ハハッ、特別室。まあ、あの人も心配してたんだって。見た目からも傷だらけだったし、それに気を失ってから精神疲労も爆発したのかお前起きないんだもん」
「ねえ、起きたら次の日かと思ったら空白の1日があってビックリでしたよ。人生の1日を無駄にしたなって」
「それだけ限界に鞭打ってだって事だ。自分の身体の休息くらい許してやれよ」
勿体無いとぼやく姿はすでに体力的には全開らしい。