だから何ですか?Ⅲ
ゴウンゴウンと特有な機械音がBGM。
こうして向き合い捉える亜豆は相変わらず無口にゆっくり上昇する事で捉える景色に意識がいっているらしい。
その角度で、丁度痛々しい痕がより鮮明な方の頬が明確で、思わずピクリと動いた指先はその痕に触れたかったのだろうか?
「・・・あんまり、見ないでくださいね」
「・・・いや、別に、」
「分かってます。伊万里さんが本気で見たままで人を判断しない事くらい。これは・・・好きな人を前にしての女心からの羞恥です」
「・・・・」
「何ですか?私だって華美に綺麗に見られたいまで行かずとも、やはりそれなりに整った自分で会いたいとくらいは思うんですよ?」
「・・・たしかに、・・・お前のそういうラフ姿って泊まった夜くらいしか見た事ねえな」
基本会う場所は勤務先の会社で、社長に付き従う仕事であるのだから身なりを整えているのは当然であるのだろうけれど。
休日に外で会うときは会社とはまた違う装いで自分を整えてあったし。
こうして日中の開けた空間で素のままに近い亜豆は新鮮だ。
それにこちらとしては否定的な感情はないと言うに。
「あだっ・・・お前、蹴るか?!」
「大げさな。わざわざ履いてたサンダル脱いでの素足で脛を小突いた程度でしょう」
「そんな気遣いするくらいなら端から仕掛けるな。足癖悪ぃな。・・・ってか、相変わらず細ぇな。ちゃんと食ってんのか?」
俺の膝に押すような蹴りを与えてきた亜豆の素足。