だから何ですか?Ⅲ






「・・・まーた弄ってんのか。それ」



風呂上りの火照った体に身に着けているのはパンツとスウェットのズボンだけ。


まだ中途半端に拭き途中であった髪からは時折水滴が滴り、それを拭うためのタオルは肩から下げている。


とにかく水分補給をと冷蔵庫を開け、真っ当な水分かアルコールかを迷って手にしたのはミネラルウォーターのボトルだ。


それを手に先にソファに身を置いていた亜豆に近づき背後から覗き込めば、実に嬉し気に指先で触れていたのは左足首のアンクレット。


いや・・・可愛いんだけどね。


俺としては喜んでもらえて何よりなんだけどね。


でも、気が付けばそれを触ってないかい?お嬢さん?


だからこそ呆れ半分にそう突っ込めば、不貞腐れるでもなく携えた笑みそのままに振り返ってきた姿が、



「だって、嬉しいんですもん」


「っ・・・」



か・・・わい~・・・とか思う俺・・・超末期か。


思わずにやけた顔を静かに逸らし『ばーか』と言いつつ心は滅茶苦茶沸いていたりする。


そんな俺などお構いなしに本当に飽きもせず細身のチェーンを指先で弄って、色々な角度からそれを楽しんでいる亜豆は終始ご機嫌だ。


こんな風な笑い方もするんだな。と改めて思うほどに無邪気と言うのか。

< 342 / 381 >

この作品をシェア

pagetop