だから何ですか?Ⅲ
そんな誘いに煙草を口に咥え直し、亜豆の咥えているものへと火種を移す。
ジワリと赤く色づく先端からゆらりと立ち上る紫煙を視界に収め、直後にゆっくりと離れる顔の距離に引き止めたいと欲求が疼く感覚に相当末期だと思ってしまう。
離れた以上の距離を埋め尽くして、貪るように口づけられたらと、気を抜けば本当に実行してしまいそうである自分に心の内で失笑。
そんな俺の心中を探るでもなく、静かに煙と遊ぶ姿は屋上でよく見た亜豆の姿に一致する。
ああ、この姿も好き。
普通煙草を吸う女と言えば一般的にあまり印象はよろしくないのだろうけれど。
それでも俺はこの亜豆が好きだと言える。
こんな風にさらりと凄艶な吸い姿を見せられるのも俺の為に努力した結果だと知っているからなのか。
んー・・・やっぱり・・・ちょっとキスしてえな。
でも、キスしたら結局その後ずるずると展開しそうなほど現状発情期だし。
亜豆に至っては煙草に火つけたばっかだしな。
なんて、性欲馬鹿発揮にすでに悶々とした葛藤を抱きながら自分も煙と遊び亜豆を見つめていれば、今までどことはないところを走っていた亜豆の視線がスッと戻り俺の視線とぶつかるや否や、
「・・・・好きです」
そんな聞き慣れた響きは紫煙混じりに聴覚を擽った。