だから何ですか?Ⅲ
唐突に、それでもまっすぐにどこまでも澄んだ眼差しで発せられたその言葉は軽い感覚で使われたのではないとよく分かる。
でも、だからこそ改まって言われた言葉には少々虚を突かれ、ポカンとした表情でどういう意図からの物かと見つめ返した。
そんな俺に小さくはにかんで見せた後、手に収まっていた吸い始めたばかりであった煙草はテーブルの上の灰皿にトンっと静かに押し付けられた。
そこまでの流れを静かに見守り、再びゆっくりとこちらに戻った亜豆は・・・
あ・・・お嬢ちゃん。
なんとなくそんな事を感じた刹那。
「ずっと・・・好きでした。・・・【お兄さん】の事」
「・・・・・」
「【亜豆】として、【伊万里さん】の事も好きで・・・、今は・・・大好きが2つも合わさってまだ感情の収拾がつかない程」
言葉のままにもどかし気に、僅かに苦し気な息を吐きながら音を零しゆっくりと寄せられた顔が今額にそっとぶつかる。
そうか・・・これは【お嬢ちゃん】が溜めこんでいた【好き】の告白?
さっきまで凄艶であった筈の表情が今はどことなく幼く羞恥に揺れて、それでも大人のままの欲求も揺らしてそのアンバランスさが絶妙に妖艶で。
・・・・誘われる。
「んっ・・・」
不意に至近距離で捉える亜豆の顔が熱っぽく崩れて目を細め、同時に熱い息と甘い声を漏らすから『ん?』と疑問に思うも原因は俺だった。