だから何ですか?Ⅲ


コーヒーで安息に染まって息をついていれば、この後の予定を把握している小田が確認の言葉をかけてきて。


それに対してはチラリと腕時計を確認し心配は無用だと切り返した。


その会話の流れ、予定内容に触れてきた小田の言葉に投げられるまま反応を返していたけれど、やり取りが続くほどどうも妙な気分に追い込まれていく。


だって、



「なんか・・・すげぇ自分の結婚式みたいな気になったじゃん。小田が【亜豆さん】とか言うから」


「何でですか。だって社長のお相手も【亜豆さん】でしょう?他に何と言えば?」


「いや、まあ、そうなんだけどさ」



確かに【亜豆】だし、もっと言えば顔もスタイルも同じだから結構複雑なんだよこの結婚式の参列。


そう、話題に上がっていたのは俺と亜豆の結婚式とかそういう事ではない。


社長、つまりは海音と亜豆の双子の姉の結婚式で、友人として招かれ一応参列予定であるわけだけど。



「複雑・・・」


「【亜豆さん】が他の男性に取られた気分になるからですか?それとも・・・ドレス姿楽しみにしてたのにっ!なんて可愛い心情からですか?」


「・・・多分両方」


「清々しい程素直に惚気ますね。・・・ああ!改善策!いっそ私と結婚なんてどうでしょう?そうしたらドレス姿も新鮮ですよ」


「・・・小田っち、俺の事まだ好きなの?」


「ん~~~・・・微妙」


「フッ・・・なんじゃそりゃ」



最早挨拶代わりの如くであった小田の告白は今も時々こんな風に会話に練り込まれている。


それでも前の様な本気のストイックさはなく、突っ込めばこの通りの返答だ。


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