だから何ですか?Ⅲ
その感覚にホッとする心もあれば少しばかり寂しいと哀愁も感じて。
それでも後者の感情を口にする事は懸命でない。
ただ静かに自分の内々だけで小さくその感情を追悼して、大切な記憶として奥に仕舞い込むように飲み込んだ。
「正直言えばですね。好きと言えば好きなんですよ」
「フッ・・おいおい、俺今程センチメンタル飲み込み終わったとこなんだけど?」
静かに蓋を閉じかけていた最中、まだ待ってと言うように挿し込まれた言葉には思わず苦笑いで小田を見る。
そんな俺にクスリとほんの少し意地悪さを滲ませた彼女だけどもすっきりとした笑顔は愛らしいと素直に思えた。
「伊万里さんを異性的に好きだと思う感情はまだあって、きっとそれは報われるまでずっとあるものだと思うんです」
「なんだよ。まだストーカー継続宣言か?」
「もう、茶化さないでください。そうじゃなくって。それでも・・・持っていても小さくはなっていってるって事です」
「風化・・・じゃなくて?」
「・・・風化って言う・・なんか消えてしまいそうな儚さと違うんですよ。・・・・んーやっぱり分かりやすく言えば小さくなったんです。なるようにしたというのか」
言葉に迷い顔を疑問のしかめながらもやはりその答えがしっくりくると、自己完結に数回頷いた小田が自信を持って俺を見上げ直してにっこりと微笑んでくる。