だから何ですか?Ⅲ
「本当に、あんたバッカじゃない!!?」
浴びせられる罵声に目を細め点滴を外したばかりの腕をポリポリと掻きながら反抗的な目を向けてしまう。
そんな俺を呆れ半分憤り半分で睨みつけてくるのは見た目こそは世間一般的に美人と言える、それでも中身は凶悪だと少なくとも俺は思ってる2つ上の姉。
伊万里 雛(ひな)
ワンレンのストレートヘアは相変わらず背中を覆うほど長いし、大きな猫目は美人だけどもきつめに見えがち。
いや、実際キツイ性格だけど。
「うっせぇな。相変わらずキャバ嬢みたいな顔しやがって」
「悪かったわね。顔が濃いのは地顔じゃボケッ!それにこの食物溢れるご時世に栄養失調でぶっ倒れる馬鹿に煩い言われる筋合いはないわっ!」
「栄養失調だけじゃねぇし、過労もだし」
「威張って言ってんじゃねぇぞ?あぁん?」
「本っ当、口悪りぃな。中指立てんな!だから男も出来ずに行き遅れてんだよバーカ、」
「はぁぁぁ?今あんた全国の未婚アラサーを敵に回したわよ」
ああ、そのせいか?
たった今『静かにして下さい!』と未婚でアラサーっぽい看護婦に怒られ『すみません』と2人で頭をさげる。
病院の待合い。
どうやら吐くものも無くなった俺の身体は思っていたより限界だったらしく会社でぶっ倒れて救急車騒動。
目が覚めてみれば病室で、すでに般若の様な顔したこの女に見下ろされ開口1番馬鹿だの罵られたわけだ。
ありがたいことに入院までには至らず、会計を済まし病院を出るとタクシーに乗り込む。