だから何ですか?Ⅲ
久々に会う姉だけども特別思い出話に花を咲かせる久しぶり感でもなく、顔を合わせればいつもこんな口喧嘩で時間を費やす。
でも、まぁ、本気で仲が悪いわけでもなく。
「・・・母さん元気?」
「『死んだら殺す!』言っとけ言われたわよ」
「フッ・・・元気そうで何より」
容易に想像がつく。
この隣にいる女そっくりで、道着姿でこちらに中指を突き立てた母親の姿が。
母方の家は武道家系で、実家では未だに爺さんが師範の小さな道場をやっている。
母親もそこで今は子供達に師範をしているわけだけど。
そんな訳で俺も隣のこの女もガキの頃から当たり前の様に武術を叩き込まれていたりする。
「本当に・・・やめてよね。救急車とか病院とか」
「・・・悪かったよ」
「あんた、只でさえ父さん似なんだから・・・っ・・なんか・・ベッドで意識ない姿見てたら、」
「悪かったって、」
ああ、声が震えてる。
そんな事を感じて敢えて視線は窓の外に固定する。
すぐに鼻をすする音がして、それでも泣くまではしていないであろう姿も気丈を保つ様に俺とは反対の窓の外へと顔を背けた。