だから何ですか?Ⅲ
そんな俺の不愉快などお構いなし?
「お母さんの心配的中よねぇ。あの子はいつまでも【遊び】に夢中になりすぎる子供だって。いつになっても結婚の言葉どころか女の子の気配がないっ!ってぼやいてたわよ?」
「それ、・・・今に始まった事じゃねぇじゃん。むしろ学生時代からずっと言ってるからあの人」
「いっそ『ガキ孕ませたから結婚する!』って報告でもいいから欲しいってさ」
「それ問題発言じゃねぇか」
「でも、・・・どうやらそんな報告も出来なくもないんじゃない?」
「あっ?・・・・・・っ、」
何言ってるんだといい加減鬱陶しい感覚で振り返ると、視界に捉えたのは俺に向かって見せつけるようにリップを手にしている雛の含みのある顔。
『コレなーんだ?』と問わんばかりの姿が手にしているのは薬用だけども色付きの物。
どう考えても男がつけるものではなく自分のモノだとは誤魔化せない。
亜豆の・・・愛用品。
「・・・・捨てといて」
「・・・・・」
求められた答えではなく『不用品だ』と示して言葉を弾き、捻っていた体を前に戻すと何度目かの息を吐いた。
そんな背後でコトリと小さく響いたのは持っていたリップを元の位置に置いた音だろう。
馬鹿みたいだ。
『捨てていい』と言ったのは自分であるのに、元の位置に戻った音の響きに安堵するなんて。