once again〜season2〜
笑いを堪えている氷室室長は、途中で車を停めた。

「まともに運転出来ないよ」

車を停めた氷室室長は、そこで初めて横を向いて私を見た。

「あ、あの…」

見ないで欲しい…
そんな願いも叶わず。
氷室室長は、私を見ていた。
もちろん、私は顔を上げることも出来ず…

「高瀬とは長いの?」

「へ?は?」

「いや、高瀬との付き合いって長いのかな、って」

「あ、高校からの同級生なんです」

肩透かし…
涼香の事か、興味はそっちよね…うん。

「君達の通ってた高校はそんな校風なのかな。あんまり関わらないだけに、新鮮だよ」

「いや、私と涼香が変わってるだけかもしれないですけど…」

車と言う密室で無言が続いた。

「あの…」
「俺さ…」

俺?え?氷室室長ってこんな砕けて喋るの?

俺、と聞いて私は驚きを隠せなかった。氷室室長はいつも真面目で、言葉遣いも丁寧で、自分の事も私としか言わなくて…そんな室長が?

「あ、びっくりした?俺もいつも秘書やってる訳じゃないからな。これが普段の俺。高瀬も最近知ってびっくりしてたよ」

「いや、あの…真面目が服を着て歩いてると思ってたので…」

「ハハハ…真面目が服着て歩いてるか。確かにな。じゃなきゃ、秘書室長なんかやってられないだろ?」

その時、私は氷室室長が抱えていた何かが見えたような気がした。
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