星空電車、恋電車
ほしぞら電車
明日はどっちだ
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ーーーー4年後
「お嬢さん、じゃなかった千夏さん。僕今から外回りなんで、望月商事の小野さんから電話があったら僕の携帯に連絡してくださいね」
「はい。かしこまりました」
「千夏さん、今日の来客予定は把握してる?本口様は緑茶もコーヒーもお嫌いだから・・・」
「はい、本口様には冷えた麦茶ですね」
「千夏さん、昨日の封書ってーーー」
「はい。昨日のうちに郵便局の窓口のポストに投函しました」
「千夏さん、澤田商会からの…」
「さっき入金確認しました」
千夏さん、千夏さん、千夏さんって・・・・・今日も朝から忙しい。
大学三年生の夏から大学の長期休暇の度に父親が支社長をしている会社の見習い秘書のようなアルバイトをしていたら、私はろくに就活をすることなくここに就職してしまっていた。
大学1年からバイトしていたカフェはパティシエの真緒さんがしばらくの間子育てに集中することになりカフェで提供するスイーツは他の洋菓子店に卸してもらうことになったのだ。
それを機に私もカフェのバイトを辞めた。
その後、昨年大学を無事卒業してここに就職したのだけれど、二年近くも休暇の度にアルバイトしていたからここの職場の皆さんから見て、新卒で入った時から私にはフレッシュ感がないらしい。
そしてそれがこの就職して二年目ともなればなおさらだ。
まだたまに支社長の娘ってことでバイト時代の名残の「お嬢さん」と呼ばれてしまうこともあるけれど、決して特別扱いされているわけではない。きちんと下積みからさせてもらっている。
「千夏ちゃんは今夜約束があるんだっけ?」
「そうなんです。大学の先輩が出張で神戸に来ていて一緒に夕飯を食べる約束をしているんです」
「そっか、じゃまた今度ね」
総務の仕事を教えてくれた先輩女子社員の榊さんがひらひらと手を振ってデスクに戻って行った。
仕事の後、職場の先輩たちはよく居酒屋「くじら亭」で食事をしている。
元社員の坂本さんが父親の後を継いだお店で安い、早い、旨いが売りだ。
今夜も何人かでくり出すらしいけれど、今夜の私は予定があるのでお断りをしていた。