星空電車、恋電車
私もしっかり京平先輩に聞けばよかったのだ。しっかり聞いていたらこんな回り道しなくても済んだはずだ。

「ありがとうなんて言ってもらえる資格なんてないです。私に京平先輩に連絡するように言ってくれたのは山下さんなので。山下さんがいなかったら今も会えないままでした」

「そうか、山下さんが。お礼言わないと、だな」

私も深く頷いた。

「俺さ、留学中もその後も男として人として成長しなくちゃって頑張ったつもりだ。胸を張って千夏に、”ちー”に会いたかったからね」

それから先輩のこの4年の間の話を聞いた。

彼は留学先の大学教授に気に入られ留学を延長して彼の研究の手伝いをしながら勉強していたのだという。
天文学、宇宙物理とかなんだか難しい方面の勉強をしていたらしい。
今は企業の研究室に在籍しながら教授の共同研究者という立場で日本と海外を往復しているというから驚きだ。

天体の観測とか望遠鏡のレンズの開発とかに関わっているなんて規模の大きなすごい仕事だなと思うと同時に樹先輩らしいスケールの大きさだと感心する。

「さっきのプラネタリウムのプログラムを作ったっていう話は?」

「ハイランド教授の研究室にさっきの井本さんのいるスーパーノヴァって映像会社からプラネタリウムのプログラム作成依頼が来てね、教授が俺にチャンスをくれたんだ」

それでプラネタリウムのプログラムを。

「俺とちーを繋ぐものはあの流星群だと思ったし。高校時代のあの時、ちーに告白することに懸命で結局流れ星は見てないから、プラネタリウムで再現してちーに見せたいなと思って作ったんだ。まさか見てもらうのがこんな先になってしまうとは思わなかったけど」

言いながら照れたようにちょっと俯いた樹先輩の表情を見て私の方が顔から火が出たように熱くなってしまう。
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