不良な彼と恋の契約
行かなきゃ、いけないのにーー暗い道に、足がすくんで動けない。


真っ暗闇の林の中。

あるのは、小さな懐中電灯一つ。


不意に私は、強い力に抱き寄せられた。

「仁くんっ、私も行かなきゃいけないのにーー、怖くて進めないっ。
私も、ヒカリちゃんを助けたいのにっ」



助けたい気持ちがあるのに、そうリナちゃんだってだ。

一歩、歩く度に思い留まる。



「大丈夫。
灯りは、懐中電灯の光一つじゃないだろう?」

懐中電灯の光、一つしかない。
後は、志貴くんの持つ光だけしかない。




「本郷ヒカリの光は絶対に消えやしない。

大丈夫、絶対類が、見つけて来るからな!」


ヒカリちゃんの光。

いつだって、光っていた気がする。


「類の愛のパワーが、宇治虫なんかに負ける訳ない。大丈夫、ちゃんと帰って来るよ」

志貴くん。


リナちゃんの手を、ギュ、と握って
「大丈夫」、と語りかける志貴くん。



ヒカリちゃんーーーーっ。

相沢くん、絶対に帰って来てね!




私は、空に祈った。


お母さん、お父さん、お兄ちゃんーー。


私の大切な人、どうか助けて下さいっ。


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