明日を夢見た君へ
ひとまず病院に帰り彼女を部屋に戻してから主治医に報告に行った。

涙が散る条件だと。

記憶を失っていることを彼女も気づいていたこと。

その報告を聞いて主治医は今後のことを彼女の親と話すと言っていた。

僕が病室に行くと彼女は眠っていた。

髪に青い花弁がついていた。

(また少し泣いたのか……。)

記憶が無くなるのはどれだけ怖いだろう。

少しでも彼女を羨んだ僕が恥ずかしくなる。

僕なら怖くて狂ってしまいそうだ。

それを彼女は気づかないフリをして気丈に、美しく、いつも同じ顔で笑っていたのだ。

なんて強くて可哀想で儚い。

最高のヒロインだ。
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