スーツの君と制服の私





ーーーーーー
ーーーーーーーーーー


私は制服が嫌い。
子供に見られたくないから。

まず、家に帰って絶対着替える。


愛理と遊ばない時は、私服で家から少し離れた、いきつけのカフェに行く。


コーヒーを頼んで、飲みながら本を読む。


そんな自分に酔いしれてるのかもしれない。

コーヒー飲みながら本なんて大人じゃんって。

早く大人になりたいの、私。

いつも行きつけのカフェに行くのは他にも理由があるんだけどね。



この日もいつものカフェでコーヒーを飲んでいた。



「今日は、寒いですね。」


「そうですね。」


いつも、カフェの端の席でスーツを着て
コーヒーを飲んでいるこの男性と会いたいから。



私もいきつけだから、自然と少しだけ会話をするようになった。

会話っていっても、寒いですねとか。そんな程度。


いつも、彼の隣の席に私も座る。

私も端がすきだもん って自分に言い聞かせて。


彼はいつもコーヒーを飲みながらパソコンを開いてカチカチと音を鳴らせてる。


その音が心地いい。


仕事なにしてるのかな、何歳なのかな。
いつもそう思いながら、時間が経って、結局聞けてない。


子供に見られてないかなとか。
隣に座る私を変に思ってないかなとか。



そんなことを考えて考えて、結局気付けば、1年も経ってたんだ。




< 4 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop