まだまだ。
運動会から1週間。

あれからずっと気になっていた彼女を、電車の中で見つけた。

満員ではないものの、多少込み合う電車では

彼女のような人は、逃げ回らなくてはいけないみたいだった。

特別、痴漢にあってはいないけど………

近くで手が当たったり、息がかかるのも地獄らしい。

しかめっ面をして、一人右に左にと避けていた。

その時、偶然にも僕の前に押し出された。

座っていた僕は

隣が若い女性だったので「座りませんか?」と声をかけた。

お年寄りでも、体が不自由でもない彼女にかける言葉ではないため

一瞬キョトンとしていたけれど

隣を確認すると「ありがとうございます。」といい

座ることを選んだ。

たぶん彼女は、小さな体で沢山の荷物を持つ女の子に

声をかけてくれたんだと思ったのだろう。

これで、今この時は………心安らかに過ごせるだろう。

自分が与えてあげる事の出来た時間に、満足していた。
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