まだまだ。
それからは、見かけると席を譲ったり

自分がそっと盾になって、彼女を守った。

彼女は僕の事を何一つ知らないどころか、存在にすら気づいていないのに。

気分は正に、彼女のヒーローだった。




その日も、彼女が駅のホームに立っているのが

乗っていた電車の窓から見えた。

「あっ!」

思わず声が漏れたのは、いつもの一人ではなく

男と一緒に話していたからだ。

男は、親しそうに話しながら、さりげなく彼女を他の男から守っていた。

アイツも………彼女が男が嫌いなことを気づいてる。

そう、アイツ。

彼は、僕の友人で…………この間の運動会に誘った一人だった。

彼の名前は、坂井朋宏。

僕と同じく小学校の教師を目指してる。

明るく爽やかな彼は、大学でもかなりの人気者だ。

彼女の知り合いか?

心の中では知り合いではないと知りながら

そう思う事にしている自分に驚いた。

気になるは………『好き』なのか?

朋には最近彼女が出来た。

寄ってくる女の子達をあしらうために言っているのだと思っていたけど……

アイツの嬉しそうな笑顔を見ると………間違いなく彼女が出来た。

それも………唯ちゃんという彼女が。

もしも僕が、朋を誘わないで一人で行っていたら………

彼女の隣に立っているのは、自分だったかもしれない。

好きだと気づいた時に失恋とは………

何とも情けない話しだ。
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