まだまだ。
「彼女とはどうだ?
上手くいってる??」

失恋したとは言え、やはり気になる彼女。

ついつい友人の顔で、近況を聞いてしまう。

電車で見かけた事を話してからは、ランチの時などに

ポツポツ話してくれる。

「一緒にバイトを始めた。
彼女………接客は無理だし、保育科だから
勉強を兼ねて託児所で働くことにした。
子供相手だと、生き生きして楽しそうだから良かったけど………
彼氏の俺は、眼中にないみたいだ。」

そう愚痴りながらも、帰りに公園で喋っている時間が

とても楽しいという。

あれから10ヶ月。

夏も過ぎ秋がそこまで来そうな9月……

朋から飲みに誘われた。

居酒屋に入ると、バイト終わりのせいか

疲れきった顔の朋がいた。

「お疲れ!」

肩をポンと叩くと、いつもの爽やかとは言えない笑顔で向かいの席を勧めてきた。

これは相当参ってるな。

取り合えずビールで乾杯した僕達は

「何かあった?」と話を振った。

「彼女が分からない。」

唯ちゃんは……男が苦手だとは思っていたけど

かなり酷く、苦手というレベルではなかった。

この10ヶ月、手すら繋げてないという。

デートも、1度もしてないらしい。

「朋からデートに誘わないの?」

「もちろん誘った。
水族館に動物園、ショッピングに映画と…………
毎回断る理由は『家族が厳しいからデートできない。』
そのわりに、バイトの後で送って行っても家はいつも真っ暗で
厳しい処か、放任に見える。
夜10時を過ぎて送って行っても、毎回真っ暗なんだ。
俺が嫌なら、別れてくれたら良いのに…………
帰りの公園デートは、スゴく楽しそうに話してくれる。
別に焦ってどうにかしたいと思っている訳じゃないけど………
こうも先が見えないと………
根本的なことで……付き合ってるのか?と不安になる。」

確かに……

いくら綺麗事を並べても、僕達男は……狼になりたい時もある。

聖人君主でだけでは………生きていけない。
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