春の魔法
その日の放課後。俺は、数学の補習を受けていた。
この補習は、成績が悪い人だけが受けるのでは無く、受けたい人も補習を受けることできる。
俺は、数学が苦手だ。それが理由で先生に呼ばれて補習を受けている。
「…理解出来た?…いや、理解出来てなさそうだね」
美影は、俺の顔を覗き込んだ。その隣では、少し呆れた顔をしている氷翠さん。
この2人は、俺の補習を手伝ってくれている。開けた窓から入って来た風が、美影が着ている白いシャツの胸元に結ばれた赤いリボンを優しく動かす。
「なんとなく…」
美影と氷翠さんの説明が、分かりにくいわけではない。俺から見ると、寧ろ分かりやすい。
「美影と氷翠さんは、教師になれそうだな」
美影と氷翠さんを見てみると、2人は「それは無い」と言いたそうな顔をした。俺は、含み笑いをしながら「冗談だ」と言った。
「…次の問題に行くよ」
先生からもらったプリントの問題に指をさした美影は、机の上に置いていたシャーペンを握った。