春の魔法



俺は、美影の腕を引きながら歩いていた。図書館に着くと立ち止まり、美影と向き合う。周りには、誰も居ない。

「昨日、補習の帰りに…瑠梨さんと会ったんだ」

「紅月さんと…?」

「あぁ、いつもと違う様子だった。泣いていたんだ…聞いても、泣いていた理由を全く教えてくれなくてな」

美影は真剣な顔で、俺の話を聴いている。

「どうしたら話してくれるんだ?」

「…そっか。琥白は、まだ紅月さんのことが好きなんだね」

美影は、1年生の頃から俺が瑠梨さんを好きなことを知っている。俺が美影に話したから。

俺は「あぁ」と返事をすると、美影は、何かを考え込んだ。

「すぐに秘密を話すとは限らないし…毎日、声をかけることかな。それか、泣いているのを見た時に声をかけるだけにするとか…かな?僕も良く分からないけど……」

「それしか無いのか…ありがとな」

俺は、美影にお礼を言うと図書館を出る。出ようとした瞬間、氷翠さんが図書館に入ってきた。氷翠さんが来る前に、美影と話すことが出来て良かった…と思った。この話を氷翠さんに知られたらダメなような気がしたから。
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