姫は王となる。
「私は、もう行くわ」
「!」
お母様はそう言うと、城の門に向かって1人で歩き出した。
警備兵たちが付いて行こうとしたが、制止させられた。
「っ…お母様!」
大きな声で呼んだが、振り返りもせず行ってしまわれた。
「…花蘭様…」
立ち尽くしたままの私に、老婆が遠慮がちに声を掛けてきた。
「今は状況把握のために、部隊の本部へ向かいましょう。状況がわかり次第、次の対策を考えましょう」
「…」
そう言った老婆に返事もできず、立ち尽くしたままー…
お母様…
もう見えなくなってしまったお母様の残像を、見つめる。
「花蘭様…」
周りは皆、膝まついたまま、私が動き出すのを待っている。
"しっかりしなさい!花蘭"
さっきのお母様の言葉を思い出す。
「…行きましょう」
とても弱々しく、小さな声になってしまったが、やっと足が動いた。