姫は王となる。
そんな風の後ろ姿をしばらく見つめていたが、足を城の中へと向けた。
「…北国の王に会ったことは聞いたか?」
王室に向かって歩きながら、後ろにいる老婆に聞いた。
「はい。先程…」
「北国の王に会った時に、大きくなられたと言われた。私は以前、北国の王に会ったことがあるのか?」
「今では各国の協議会は西国で行われていますが、10年以上前はこの東国で行われておりました。ですのでその時、まだ小さかった王様をどこかでお見かけしたのかもしれません」
「そうか…」
だから、"大きくなられましたな"かー…
「…あの者たちは、泣いてはいなかったか?」
「それはー…」
この質問に、老婆は黙ってしまった。
言いにくいということは、"泣いていた"ということかー…
「明日、会議を開く前に会いたい。王室に連れてきてくれ」
「それはっ……風に聞いてみなければ、わかりません」
「では、風に伝えといてくれ。私は、あの者たちに会いたいとー…後、母様は元気だと北国の王が言っていた」
王室の前まで来ると後ろに振り返り、老婆にそう伝えた。
「それは、何よりです。承知致しました」
少しホッとした表情を見せると老婆は頭を下げ、返事をした。
その返事を聞くと、警備兵が頭を下げ王室の扉を開けた。
そして王室の中に入ると、静かに扉が閉まった。