姫は王となる。
護衛長室には、机と仮眠用のベッドぐらいしか置いていないため、立ったままの会話になってしまう。
「申し訳ございません。椅子が置いてなくて…」
「いえ、大丈夫です。すぐに、王様の元に戻らなければならないので」
老婆はそう言うと、真っ直ぐに目を見てきた。
…何だ?
「風は、護衛長として立派に任務を果たしていると思います。が、しかし、王様はそうではありません」
「…え?」
今さらっと、王様に対して批判をしたようなー…
「明日の会議は、延期してください。それをお願いしに参りました」
「…」
会議を延期…?
いや、でも…まだやらなければならないことが山積みでー…
いや、しかし…普段、国政のことで口を出さない老婆が言ってくるということは、王様に何かあったのかー…
言葉が出ず、そんなことを考えているとー…
「王様と何年一緒にいるのですか?ましてや、元婚約者でありませんか。自分の任務を一生懸命果たそうとしているのは、わかります。しかし王様は、肉体的にも精神的にもついてこれていません」
「!」
老婆が言いたいことが、やっとわかった。
「問題は山積みです。早急に解決しなければいけません。しかし、その前に壊れてしまったら何の意味もないのです」
ドクン。
「私が言いたいのは、それだけです。それでは」
言いたいことを言うと、老婆は部屋から出て行った。
パタン
静まり返った部屋には、閉まる扉の音がよく聞こえた。