姫は王となる。
老婆が部屋から出て行き、一人残された部屋に立ち尽くす。
"王様と何年一緒にいるのですか?ましてや、元婚約者でありませんか。自分の任務を一生懸命果たそうとしているのは、わかります。しかし王様は、肉体的にも精神的にもついてこれていません"
"その前に壊れてしまったら何の意味もないのです"
老婆に言われた言葉が、頭の中で繰り返される。
そんなことー…
「…わかってるんだよ!」
バン!!!
力強く机を一発殴り、抑えきれない感情が爆発した。
「わかってる…」
机を殴った拳が、ズキンズキンと痛む。
「わかってるー…」
花蘭様が王位を継承してから、一度も笑っていないことぐらい。
誰一人、参加しない会議。
大臣たちからの、心無い言葉。
国民たちからの不満や、批判。
47人の村人たちが殺され、埋葬されたお墓の前で手を合わせた花蘭様。
その背中は小さく、王としてこの国を背負っていくには荷が重すぎる。
「わかってる…けどー…」
"この東国を…共に守っていきましょう"
花蘭様とは、そう誓い合った。
だから俺は、護衛長として花蘭様のお立場を守らなければいけないんだ。