姫は王となる。
風とやってきたのは、城の敷地内にある小さな池。
小さい頃、城の外で遊ぶとなればここしかなかった。
池の真ん中には短いが橋があり、小さい頃にはよく風と渡って遊んでいた。
池の周りにはたくさんの花が咲いていて、ここに来ると花の香りを強く感じる。
「"王様も"ということは、風も老婆に言われたのか? 」
後ろに振り返り、風と向かい合った。
「え…あ…」
珍しく風が動揺し、視線が泳いでいる。
「…はい。申し訳ございません」
風は諦めたのか、膝まつき頭を下げた。
「いい。今日は、私も休みだと言ったはずだ」
そう言うと、風はポカンとした表情で顔を上げた。
「今日だけは、花蘭に戻らせて」
風にそう言った時にはもう、さっきまで我慢していた涙が溢れ出てきてしまった。