姫は王となる。




「…花蘭様のせいではありません」

「そんなことっ…」

「私の責任です」

「…」


そう言った風は、とても悲しそうな表情を見せた。


「護衛長として、王様と共にこの国を守っていくと誓いました。しかし私は、目の前の問題しか見えていませんでした」


「風は…ちゃんと護衛長としてー」

やっている。

「できていません。花蘭様がそこまで、ご自分を責めていらっしゃるということを知りながら、無理をさせ過ぎてしまいました」

風は悲しそうな…申し訳なさそうな表情で言った。

「違う…風は悪くない、私がー…」

自ら現地に行くと言ったんだ。


「いえ。無理にでも、お止めするべきでした。47人ものの村人が犠牲になり、その現実を目の当たりした時、心優しい花蘭様はきっと傷つく…それをわかっていながら、私は現地にお連れしてしまった」

目線を下に下げ、静かに喋る風。

「埋葬された村人たちの墓を目の前に、花蘭様は手を合わせられた。その時の後ろ姿は、今にも壊れてしまいそうで怖かった」

…怖かった?


「老婆にも言われてしまいました。一生懸命やっているのはわかるが、その前に花蘭様が壊れてしまっては意味がないとー…だから今日、もう一度今後のことを考え直すためにお休みを頂きました」


風が休んだ理由が、やっとわかった。


しかし、考え直すとはー…







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