姫は王となる。
「花蘭様が笑ってくれれば、私はもっと頑張れます。だから、笑ってください」
ドクン!
私たちの関係が、王と護衛長になる前の表情。
笑顔で優しく見守ってくれていた、風。
今では護衛長として険しい表情ばかりで、笑顔を見せなくなったのは風も一緒だったと、今気付いた。
ドクン。
「…っ」
ドクン。
私が唯一、愛した男の優しい笑顔。
その笑顔がこんなにも、私の心を温かくするなんてー…
「…風」
お願い、今日だけは風を愛した女の子に戻らせて。
「風はもう充分、頑張ってるよ。だから、大丈夫」
涙を流しながらの笑顔になってしまったが、風も嬉しそうに笑い返してくれた。