姫は王となる。
「…ここで悩んでいても仕方ありません。不法入国してきたとはいえ、相手は西国の王子です。これ以上、お待たせするわけにはいきません」
この場の空気を変える、決心したかのような老婆の言葉。
「先代の王様は西国とは、友好的な関係を築き上げてきました。ですから、よっぽど失礼な態度をとらない限りは大丈夫でしょう」
「えぇ…」
よっぽど失礼な態度って…
「応接室には、風とお二人で行かれてください。私は、このことを副長に報告し、国境近くの警備について話して参ります」
「あぁ、頼む」
そう言うと老婆は、頭を下げ部屋から速足で出て行った。
「…」
老婆の足音が聞こえなくなる頃、再び静けさが戻った。