姫は王となる。
いつもなら風が早急に判断し、指示を出しているはずだが…今の風は、違う。
背を向け、黙って前を向いたまま。
老婆が出て行っても、ピクリとも動かない。
「…」
じっと風の背中を見つめ、西国の王子が言った言葉を思い出す。
"あーあ、護衛長としてクビしょ?そんな奴"
"…そこの護衛長、邪魔だな"
風に向かって、邪魔とか…
クビとか…そんな奴とか…
護衛長だから、不審者に対して私を守ろうとするのは当たり前でしょう?
それを、邪魔って…
「王様」
「!」
西国の王子に対して、心の中で文句を言っていると、今まで黙っていた風が口を開いた。
「何だ?」
「老婆の言うとおり、西国の王子を待たせるわけにはいきません。参りましょう」
風はやっと振り返り、膝まつき頭を下げた。
「…あぁ」
そんな風に、言いたいことはあったが言葉を飲み込んだ。
応接室に向かって歩き出すと、膝まついていた風も立ち上がり、後ろから付いてくる。