姫は王となる。
「王様」
「!」
再び呆然としてしまっていると、背後に立つ風に呼ばれ意識を戻した。
「どうなさいますか?」
「!?」
どう…なさいますか?って…
どんな表情で風が言ったか知りたいが、振り向くことができない。
…風はー…
私が結婚してもいいと思っているの?
「…西国がそこまで、この国のことを考えていることは感謝する。…西国の王様の提案については、検討すると伝えよ」
そう言うと立ち上がり、扉に向かって歩き出す。
いつもなら風が付いてくるが、背後に気配がない。
「ありがとうございます。花蘭女王様」
カイトがお礼を言う声が聞こえたが、振り返ることはない。
扉の前まで来ると、警備兵が頭を下げ扉を開けた。
部屋を出ても、風が付いてくることはなかった。