姫は王となる。
「行かなくていいのか?護衛長」
王様が出て行かれた後の応接室。
「失礼ながら、私はまだカイト様を信用できておりませんので…西国までの帰りは、私がお送り致しましょう」
「ははっ。そこまで、ハッキリ言う奴などいないぞ?仮にも西国の王子に対して」
「気を悪くされたなら、謝ります。大変失礼致しました」
「思ってもいないことを…」
さっきまでの位置は変わらず、お互いに距離を保ちながら睨み合っている。
「元婚約者としては、私と花蘭女王様の縁談は嫌か?」
「どうして、それを…」
西国にまで、私と花蘭様の婚約の話が知られているとは思ってもみなかった。
「先代の王様が、嬉しそうに話されていたそうだ。娘と護衛長の息子が結婚するって。まぁ、あの時は花蘭女王様も王族から抜ける話になっていたし、何の問題もなかっただろうけど…今は、身分の差がありすぎる」
鼻で笑いながら、カイトは風を見た。
「身分の差も何も…私は、今はただの護衛長です」
「はっ…縁談の話を提案した時に、二人揃って同じ表情をしてたのに?」
花蘭様も…
「…気のせいでしょう?」
「よく言う。では、護衛長としてさっきの話を聞いてどう思った?」
「…私が決めることでは、ありませんので」
「ははっ。そう答えると思った」
カイトは立ち上がり、真っ直ぐと風と向かい合った。