姫は王となる。
「王様。護衛兵数百人率いる風が、今朝出立致しました」
「そうか」
翌日の朝早く、護衛兵数百人率いる風は北国の国境へと向かった。
私は見送ることもなく、王室で老婆からそう報告を聞いただけ。
「王様…」
用件は終わりだと思ったが、老婆はなかなか退室しようとしない。
「はぁ…何だ?」
そんな老婆の姿に、大きな溜め息が出てしまった。
「昨日の風の身勝手な言動、大変申し訳ございませんでした。ただ、風は…」
「聞きたくない」
頭を下げ、謝罪をする老婆の言葉を遮った。
「王様…しかし…」
老婆は頭を上げ、困った表情で話を続けようとする。
「西国に伝えよ。縁談の話を受けると」
その言葉も遮り、真っ直ぐと老婆の目を見て言うと、老婆は目を見開き驚いた。
「王様…お待ちください…風は…」
「もう一度言う。"西国に伝えよ。縁談の話を受けると"」
さっきよりも強く、同じことを老婆に言った。
「…はっ」
老婆は困惑した表情だったが、小さな声で返事をし退室して行った。