姫は王となる。



全てを知っていながら、風は国境に向かった。

北国に勝ち目などないと、自分で言ってたのに。


風は、死ぬ覚悟で行った。







それなのに、私はー…





「カイト」

「はい。花蘭女王様」

老婆に向けていた視線を、カイトに向けた。


「西国の王に、私が縁談を承認したと伝えたか?」

「はい。こちらに来る前に」

「そうか。ならば、西国は後ろ盾になったと思っていいのだな」


真っ直ぐ、カイトの目を見て聞いた。





「はい。花蘭女王様…いえ、我が花嫁」


…花嫁か…


「ならば、今すぐ北国の国境へ行く。西国の護衛兵を集めよ」


ソファーから立ち上がると、カイトを見下ろした。







「北国の王にもう勝ち目はないと、伝えてやらねば」



落ち込んでいる場合ではない。




私が今できることは、国境へ向かった風や護衛兵たちの命を助けること。




それが、この国を守る王としての役目だ。











< 196 / 247 >

この作品をシェア

pagetop