姫は王となる。
全てを知っていながら、風は国境に向かった。
北国に勝ち目などないと、自分で言ってたのに。
風は、死ぬ覚悟で行った。
それなのに、私はー…
「カイト」
「はい。花蘭女王様」
老婆に向けていた視線を、カイトに向けた。
「西国の王に、私が縁談を承認したと伝えたか?」
「はい。こちらに来る前に」
「そうか。ならば、西国は後ろ盾になったと思っていいのだな」
真っ直ぐ、カイトの目を見て聞いた。
「はい。花蘭女王様…いえ、我が花嫁」
…花嫁か…
「ならば、今すぐ北国の国境へ行く。西国の護衛兵を集めよ」
ソファーから立ち上がると、カイトを見下ろした。
「北国の王にもう勝ち目はないと、伝えてやらねば」
落ち込んでいる場合ではない。
私が今できることは、国境へ向かった風や護衛兵たちの命を助けること。
それが、この国を守る王としての役目だ。