姫は王となる。
応接室から出ると、警備兵数人が膝まついて頭を下げた。
「雨宮」
その中に、副長の雨宮の姿があった。
「はっ。王様」
風が自分の代わりに、私の護衛に付けた者だ。
「私は今から、西国の王子と国境に向かう」
「え!?」
「私の護衛には、西国の兵が付く。雨宮は老婆と共に、城を守れ」
「いや…しかし…」
「二度は言わない。以上だ。後を頼む」
「…はっ」
雨宮は納得できないような表情だったが、城に残っている護衛兵も数少ない中、副長である雨宮まで連れては行けない。
「花蘭女王様、もうすぐで応援の護衛兵が到着します」
そう言いながら応接室から出てきたのは、カイト。
「…到着次第、すぐに出立する。カイトは行くのか?」
「もちろんです。私の花嫁が危険な場所に行くというのに、夫である私が城の中に居てはいけないでしょう?」
カイトの"花嫁"という言葉に、この場にいる警備兵や副長が目を見開いた。
「…そうか。ならば、すぐに支度をせよ。私も一度王室に戻り、支度をする」
コツコツ…
皆に背を向け、王室に向かって歩き出す。
コツコツ…
すると呆然としていた警備兵数人が、慌てて後を付いてくる。