姫は王となる。


応接室から出ると、警備兵数人が膝まついて頭を下げた。


「雨宮」

その中に、副長の雨宮の姿があった。


「はっ。王様」

風が自分の代わりに、私の護衛に付けた者だ。

「私は今から、西国の王子と国境に向かう」

「え!?」

「私の護衛には、西国の兵が付く。雨宮は老婆と共に、城を守れ」


「いや…しかし…」

「二度は言わない。以上だ。後を頼む」

「…はっ」


雨宮は納得できないような表情だったが、城に残っている護衛兵も数少ない中、副長である雨宮まで連れては行けない。



「花蘭女王様、もうすぐで応援の護衛兵が到着します」

そう言いながら応接室から出てきたのは、カイト。


「…到着次第、すぐに出立する。カイトは行くのか?」

「もちろんです。私の花嫁が危険な場所に行くというのに、夫である私が城の中に居てはいけないでしょう?」


カイトの"花嫁"という言葉に、この場にいる警備兵や副長が目を見開いた。




「…そうか。ならば、すぐに支度をせよ。私も一度王室に戻り、支度をする」


コツコツ…


皆に背を向け、王室に向かって歩き出す。


コツコツ…

すると呆然としていた警備兵数人が、慌てて後を付いてくる。













< 198 / 247 >

この作品をシェア

pagetop