姫は王となる。
北国との戦
西国の護衛兵数百人と、西国の王子であるカイトと共に北国との国境に向かうこと数時間、数日前に襲われた村の入口までやって来た。
辺りは静けさに包まれ、気味が悪いぐらいだ。
「出立前に決めた持ち場につき、何かあったら報告」
「「はっ」」
カイトが護衛兵たちに指示を出すと、数百人いた護衛兵が素早く動いた。
「花蘭女王様は、私と離れないようにお願いします」
「あぁ」
馬から降りると、前後左右に護衛兵が付いた。
村は数日前と変わらず、荒れ果てたまま。
「…村人の埋葬された場まで行き、手を合わせたい」
カイトにそう伝えると、驚いた表情をした。
当たり前の反応だ。
こんな時に何を言ってるんだと思われても、しょうがない。
けど、ここに来たら思い出す。
あの悲惨な状況をー…
「案内をお願いします。花蘭女王様」
「!」
隣にいるカイトがニコッと笑った。
「お優しい花蘭女王様の想い、亡くなった者たちに届いているでしょうね」
「…」
その言葉は、風もー…
"先代の王様は、先代の王様です。花蘭様は、花蘭様です。王族としての品格、振る舞い、そして誰に対しても優しく接されるお姿。その優しさはきっと、国民たちにも届くでしょう"
私が王位を継承し悩んでいた時に、風が言ってくれた言葉。
その言葉に、どれだけ励まされたことかー…
「…行くぞ」
涙が出そうになるのを堪え、カイトを見上げていた顔を前に向けた。
そして、埋葬された場所に向かうため一歩足を踏み出した。
「はい、花蘭女王様」
カイトが隣を歩き、前後左右に護衛兵が辺りを警戒しながら歩く。
埋葬された場所に向かいながら、隣にいるカイトの気配を感じ"…風は絶対、隣に並ばないのにな"と考えてもしょうがないことを思いながら歩いた。