姫は王となる。
何これ…
真っ赤に染まった両手が震える。
「血ですか?!どこかお怪我を?」
カイトも目を見開いて、驚いている。
血…
「…違う」
これは、私の血ではない。
「じゃあ、誰の…」
「風の血だ」
さっき、風の背中に手を回した時に付いたんだ。
「なっ…その出血量で戦っているというのか?!」
カイトも驚いて声を荒げ、風が向かった方向を見た。
「…本当に死ぬ気か…」
「!」
ドクン
カイトがボソッと言った言葉が、耳に届いた。
風は…死ぬ気…?
ふと、ここに来る前のことを思い出した。
"そちらの護衛長は死ぬ覚悟で、この国を…花蘭女王様をお守りしようとしているのに"
"風は全てを知っていながら、国境に向かいました。北国の王がこの国に入る前に、自ら北国の王と刺し違える覚悟で行かれました!!"
カイトと老婆との会話だ。
ドクン
風は死ぬ覚悟で、この国を守ろうとしている。
ドクン
北国の王と刺し違える覚悟で…
ドクン
こんなに出血していても、まだ戦っている。
ドクン
このままだと、本当に死んでしまう。