姫は王となる。
ハァハァ
「…お前ごときか…」
ここに来るまでは、そう思っていた。
ハァハァ
「こんな王様で…北国の国民は…可哀想だな」
けどそれは、ただ逃げたかっただけなのかもしれない。
俺がいてもいなくても、花蘭様は西国との縁談を受ける。この国のため、国民を守るためー…
ハァハァ
「花蘭様は…お前よりも…よっぽどできた王様だ…」
王族の命でも、護衛兵の命でも、国民たちの命でも…命に優先順位などないと仰る、優しいお方だ。
ハァハァ
「お前なんか…王でもなんでもない…」
そんな花蘭様が、西国の縁談話を断るとは思えなかった。
だから、俺は逃げたんだ。
花蘭様が俺ではない、違う男の隣に並んでいるのを見たくなくてー…
隣に並ぶことさえ、もう俺にはできないから。