姫は王となる。
「だから…言ったじゃない…命を懸けてまで守らないでって」
風の頬に、涙がポタポタと落ちる。
「こんな風の姿を見たくなくて、言ったんだよ?」
血だらけで城に運ばれて来た風を見て、護衛の任務から外した。
命を懸けてまで守って欲しくなかったから。
風を失うのが怖かったから。
けど、結局私はまた、風に護衛長の職務を与えてしまった。
風に側にいて欲しかったから。
私たちはもう、そういう関係でなければ側に居ることができなかったから。
「風……私ね…」
風の頬を濡らす涙を優しく拭う。
「誰と結婚しても、私は風しか愛せないんだよ?風しかいらない。風が居てくれれば、他に何もいらない」
拭っても、拭っても、涙で頬が濡れてしまう。
「風を失ったら、私は生きていけないんだよっ」
目の前に倒れている風に泣いてすがっても、ピクリとも動かない。目を開けない。
風は、死んでしまったのー…