姫は王となる。
「…母様…」
勢いよく扉を開けたのは、母様だった。
老婆を連れて王室に入ると、静かに扉が閉まった。
パタン
「…私は入ることなど、許していない」
腫れた瞼、目の周りのクマ、ぐしゃぐしゃの髪を見られるのが恥ずかしくて、母様と老婆に背を向けた。
「いつまで、そうしている気?」
ドクン
「貴方は王なのよ。王としての職務を全うしなければならない」
ドクン
「…っ」
誰のせいで…
拳を握り、奥歯を噛み締める。
「誰のせいで風があんなことになったと思ってるの!?」
勢いよく振り返ると、母様に向かって怒鳴った。
「北国の王のせいで風は死んだ!!その北国の目的は、母様だったのでしょう?!そのせいで、風は犠牲になった!!北国のことがなかったら、私たちは結婚してずっと側に居れると思った!!!なのに…」
涙がポタポタと流れ落ちる。
頭では母様が悪いわけではないと思っていても、感情が抑えられず責めてしまう。
こんなことをしている場合ではない。
と思っていても、風を亡くしたことから立ち直れない。
風のことを考えなくなったら、風は本当にいなくなってしまうような気がしたから。